研究内容

本研究室で現在取り組んでいるあるいは過去に取り組んだ研究テーマについて簡単に紹介します.詳しい解説では発表論文の関係を述べます.そこでの文献番号は「主な研究論文」で示した論文リストの番号に対応しています.

逆問題(逆解析)

通常の応答解析では入力とモデルから出力を計算します.例えば,地震動(入力)と橋梁モデルから応答時刻歴を計算することを順方向とすると,応答時刻歴から橋梁モデルや入力地震動を推定することは逆方向になることから,逆問題と呼ぶことにします.逆解析,インバージョン,パラメタ同定(identification),データ同化(assimilation)などと呼ばれることもあるようですが,ニュアンスの違いはあるもののほぼ同じような意味です.ある構造物について剛性の分布を応答などから逆推定し,過去の推定結果に比較して剛性の低下が見られた部位を損傷と考える損傷推定,ヘルスモニタリングの研究が多く行われています.私が最初に書いた論文が逆問題の基礎理論に関するもので,その後いくつかの関連した研究発表を行いました.最近では逆問題+MCSであるSMCS(Sequential Monte Carlo)に興味をもっています.SMCSについては次の「MCSに基づく信頼性評価」をごらんください.

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MCSに基づく信頼性評価,確率論的安全評価 (PSA, Probabilistic Safety Assessment)

モンテカルロシミュレーション(Monte Carlo Simulation, 以下MCS)はかつて計算時間が膨大なため特別な場合にしか使われない方法だったようですが,最近では計算機能力の飛躍的な向上により身近な方法となってきました.そうした背景のもと,MCSに基づく損傷度曲線の算定方法や効率化に関する研究を行ってきました.最近では逆問題+MCSであるSMCS(Sequential Monte Carlo),PF(Particle Filter)に興味をもっています.逆問題の立場からは観測量が少なくモデルパラメタの推定が困難な問題(非適切性)でも,信頼性評価の立場からは有効に観測情報を活用できます.信頼性設計,信頼性工学の立場から確率評価のニーズも高まっているようです.

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LCCに基づく性能設計,アセットマネジメント

ライフサイクルコスト(Life Cycle Cost, LCC)には様々な項目がありますが,地震リスクと初期建設費あるいは耐震補強費から算定するLCCについて研究をしてきました.ここでの地震リスクとは地震時被害額の期待値を意味し,すなわち,「LCC=初期建設費+地震時被害額×被害確率」として最適安全性レベルや耐震補強順位などを検討してきました.また,構造物の劣化を考慮したLCC,補修計画についても研究を行っています.

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MPS法に基づく地震時応答解析

2008年より取り組んでいるテーマです.地盤の大変形や破壊は古くからある重要なテーマですがその数値解析は今も研究のフロンティアです.粒子法のひとつであるMPS法は比較的最近提案された方法(1995)で,当初は流体解析用に開発されたようですが,その後弾性体解析にも拡張されました.波動方程式を粒子に基づき離散化して解く方法であり,粒子を細かく配置することで厳密解に収束します.MPS法は結果的にDEMを拡張した定式化になっておりDEM研究で培われた破壊解析のノウハウを反映できることが大きな長所と考えています.

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その他

インフラ施設の建設,運営を行っていく上で市民との合意形成は大変重要なテーマです.市民にとって安全,安心と感じるようなインフラ施設の運営を行うには,専門家による評価だけでなく,一般市民が危険をどのように考えているかを把握することが必要です.こうした背景のもと,アンケート調査によるリスク認知や統計的(確率的)生命価値,などに関する研究を行っています.

今は行っていませんが,防犯環境設計のための研究や,インフラ施設の振動を可聴化することにより振動解析の教材やインフラ博物館での展示物にする研究も行ったことがありました.防犯環境設計の研究にはデータが大切と思いますが,プライバシーの問題があり公開されているデータには限りがあります.どこかデータを持っている組織と共同研究を行わないと進まないようです.一方,振動の可聴化もどこか興味をもってもらえる博物館がないとなかなか発展性はなさそうです.

インフラ施設の振動可聴化の詳しい解説はこちら(音を聞くことができます)